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国際収支とマネーストック増減の関係性について分かりやすく解説

さて、前回から予告しておりました、国際収支とマネーストックの関連性について解説していきます。

 

 まずは、マネーストックという概念について解説しましょう。似た用語でマネタリーベースという概念もありますので、そちらと比較しながら説明いたします。では、まず両者の辞書的な定義はどうなのか日本銀行のホームページを参考に書いてみます。

 

マネタリーベース → 日本銀行が世界に直接供給するお金

マネーストック → 金融機関から経済全体に供給されている通貨の総量

 

 マネタリーベースの説明から行きましょう。日本銀行が供給するお金とありますが、これを専門用語で日銀当座預金といいます。我々は普段預金の引き出しや振込などで市中銀行を利用していますよね。そして、その市中銀行日本銀行(日銀)に口座を開設しておりまして、そこに振り込まれる預金のことを指しています。つまり、「日銀が市中銀行に供給した日銀当座預金」を指しています。

 

 一方、マネーストックとは、その市中銀行から企業であったり個人に向けて供給されるお金のことです。というのも、世間のほぼ全ての人はどこかしらの市中銀行に口座を開設していると思います。で、その口座に「信用創造」という仕組みを通じてお金が供給される訳です。信用創造とは簡単にいうと、貸し出しによってお金を新しく作る仕組みのことです。したがって、マネーストックとは、信用創造によって市中銀行が民間の企業や個人に供給した貨幣」のことです。

※ 日銀当座預金信用創造は別の記事で詳細に解説しますので、今のところは日銀当座預金信用創造っていう言葉があるんだな〜くらいの認識で大丈夫です。

 

言葉だけですと、分かりにくいので、今までの説明を図1に整理してみます。

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          図1 マネタリーベースとマネーストックの違い

 

 さて、お次は国際収支の説明に移ります。前回の復習ですが、国際収支の定義は「国家間でモノやサービス、資本や資産のやりとりをした際のお金の動き」でした。では、この時のお金の動きはどうなっているのか、まずは図2に示します。

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                     図2 国際間のお金の流れ 

 

 上図では仮に日本国内の企業がアメリカに輸出をすると想定しております。その場合お金の流通経路は以下の通りとなります。

①日本企業からアメリカに輸出→②日本企業がアメリカからドルを入手→③日本企業はドルを市中銀行Aに持込(ドルを持っていても日本国内では使えないからです)→④市中銀行Aはドルを政府に持込→⑤政府は市中銀行Bに国債を発行→⑥政府は国債の対価として円を入手→⑦政府は市中銀行Aに円を引渡→⑧市中銀行Aは企業に円を引渡→⑨市中銀行Bは国債を日銀に持込→⑩日銀は市中銀行Bに円を引渡

 

 ここで、図1と図2を比較して頂くと、⑧がマネタリーベース、⑩がマネーストックのことだと分かります。つまり、上記より輸出の場合はマネタリーベースとマネーストックは共に増えると分かります。輸入の場合は図2の矢印の向きが反転しますので、マネタリーベースとマネーストックは共に減ると分かります。

 

 では、輸出をする時には、国際収支についてはどう変化するでしょうか?

 前回の復習から入ります。国際収支は以下の恒等式(1)で表現することが可能でした。

    国際収支 = 経常収支 + 資本移転等収支 = 金融収支    (1)

そして、 同じく前回この式(1)は平成26年に改定されたものだとも書きました。改定前の式は外貨( 図2の説明で登場したドル)が式に登場し、個人的に分かりやすく感じるため、そちらの方に式変形いたします。

 金融収支 = 資本収支 + 外貨準備高 (2)

さらに、この輸出フローにおいては外国政府より資本の援助を受けることはないため、

 資本移転等収支 = 0   (3)

とします。

(2)(3)を(1)に代入すると、以下の式となります。

  国際収支 = 経常収支 - 資本収支 = 外貨準備高   (4)

 

 ここで、先の図2の状況下で、日本はアメリカに100億円分の自動車を輸出したとしましょう。モノやサービスが流出する取引では経常収支が増加するというルールがあります。したがって、経常収支は100億円増えたということになります。日本が自動車を売ることで100億円分のドルが流入したと言い換えることもできます。この時まだ②の段階であるならば、企業にとっては自動車という資産がアメリカに流出しているため、100億円分の資産が減ったと考えます。つまり、資本収支は−100億円です。しかし、④の段階で、政府はドルを入手するため、外貨準備が100億円となります。(4)式における資本収支-100億円が右辺に移行されて、100億円になると考えると良いでしょう。つまり、輸出額が輸入額を超過する場合、つまり、経常収支が黒字になると、外貨準備高が増加するということが言えます。逆に、輸入額が輸出額を超過する場合、つまり、経常収支が赤字になると、外貨準備高が減少するということが言えます。

 

 上記の事実を整理すると、以下の結論となります。

(1) 経常収支が黒字    → マネタリーベース増、マネーストック増、外貨準備高増

(2) 経常収支が赤字    → マネタリーベース減、マネーストック減、外貨準備高減

 

 (1)(2)を見ると、一見、(1)の場合の方が日本経済にとっては好ましいように思われます。マネーストックが増えているため、民間に供給される貨幣が増えるからです。しかし、私は(1)(2)の"どちらの場合であっても日本経済には好ましくない"という見解です。つまり、"いつ何時も貿易などの外需に依存せず、内需主導型の経済システムを駆動するのが好ましい"と考えます。

 

なぜそう考えるのか、具体的にどういう意味で好ましいと述べているのか次回解説したいと思います。

ここまでご覧いただきありがとうございました。

次回以降もよろしくお願いいたします。